セルフライゲーションシステムを使った矯正

セルフライゲーションシステムを使った矯正

痛みが少なく、早く動く!新しい矯正装置
1.矯正の歴史を変えるブラケットの誕生

矯正の歴史を変えるブラケットの誕生1990年代半ば、アメリカのデュイット・デーモン博士が新しい仕組みによる矯正装置を開発しました。
のちにアメリカで一大ブームを起こす「デーモンシステム」です。
この矯正装置の仕組みは「ローフォース・ローフリクション」と呼ばれ、それまでにはない画期的な歯の動きを実現するものでした。
そしてこのローフォース・ローフリクション・テクニックを用いた矯正方法のことを「セルフライゲーション矯正」と呼びます。

2.ローフォース・ローフリクションとは

ローフォース・ローフリクションとはローフォース・ローフリクション(Low-force, Low-friction)とは「少ない力・少ない摩擦」という意味です。

「装置をしっかり歯に固定し、強く引っ張って歯を動かす」という
それまでの歯科矯正の常識だった概念を根底から覆した、画期的な仕組みです。
これにより既存装置に比べ、痛みが軽減される、歯が動くのが速いなどのメリットが挙げられます。

3.セルフライゲーションブラケットとは

セルフライゲーションブラケットとは ローフォース・ローフリクション・テクニックを実現する矯正装置が「セルフライゲーションブラケット」です。

歯にブラケットを一つずつ取り付け、それにワイヤーを通すという構造や見た目は従来の装置と大差ないのですが、その留め方や力のかかり具合いに大きな違いがあります。

セルフライゲーション(self-ligation)とは「自ら結紮(※)する」という意味で、それまで矯正装置に不可欠だったワイヤーと歯を固定する結紮リングやゴムを使用しないことを示しています。

セルフライゲーションブラケットは現在、デーモン博士の開発した「デーモンシステム」のほか日本の「クリッピー」などが代表的です。当院ではクリッピーCを採用しています。
優しい力で矯正が行える装置で、矯正時の痛みを軽減します。

※結紮(けっさつ)とは:主に医療用語で「結ぶ」「縛る」という意味です。矯正歯科においては、ワイヤーを固定するためにゴムやリングなどをブラケットに留めることを指します。セルフライゲーションブラケットではこの結紮が必要ありません。

装置の形状や大きさ、素材の違い

 

通常ブラケット

セルフライゲーションブラケット

メタルブラケット
(従来装置)

デーモン3
(オームコ社製)

クリッピー
(トミー社製)


メタルブラ


デーモン3


クリッピーc

素材

金属

透明プラスチック
+金属

透明セラミック
+ロジウムコート金属

大きさ

小さい・薄い

普通・厚い

デーモンより少し大きい・厚い

見た目

ギラギラと目立つ

下半分の金属が目立つ

目立たない

素材の違い

金属・プラスチック・セラミックの素材差は見た目に直結します。
金属は強いのでブラケット自体の大きさを小さくすることができますが、
ギラギラして非常に目立ちます。

大きさの違い

大きさが大きいほど、矯正(特に開始時)の痛みが大きくなります。
ただし、セルフライゲーションブラケットは痛みの軽減を図れる構造のため、
少し大きくてもメタル装置ほどの痛みは感じません。

セルフライゲーションの特徴を表す実験

3種類のブラケットと、1本の矯正用ワイヤーを使って、興味深い実験をしてみましょう。

1本のワイヤーに、3種類のブラケットを上記の方法で
つけます。

オレンジ色の○
を支点にワイヤーを立たせてみると…

 
ゴムで結紮したメタルブラケットは止まったままですが、デーモンクリッピー
重力によりするすると落ちてきてしまいます。
これがセルフライゲーションの一番の特長です。

上の実験で分かるように、セルフライゲーションブラケットの一番の特徴は、
「ワイヤーとブラケットが完全に固定されていない」ことにあります。
ゴムなどできちっと留めてしまわないため、ワイヤーはそれぞれのシャッターの
中に少し「遊び」がある状態で存在しています。
ブラケットを装着した歯に強い力がかからないため、摩擦抵抗が減少し、
痛みの軽減が図れる
のです。

そして、この弱い力&少ない摩擦(ローフォース・ローフリクション)が歯の動きを早めるという
驚くべき結果をもたらすのです。

セルフライゲーションシステムの特徴

歯の移動を早める理由

「デーモンシステム」「クリッピー」といったセルフライゲーションブラケットは、歯に移動力を加えるワイヤーを完全には固定せず「遊び」がある状態で維持します。
このため歯や歯根膜、歯槽骨にかかる力はごく弱く、痛みが少ないことはお分かり頂けると思います。

さらにDr.デーモンは「歯とその周辺組織(歯根膜・歯槽骨)は緩やかな力を加えた方が生物学的に早く歯が移動する」という驚くべき効果をローフォース・ローフリクションの効果として発見したのです。
これは、緩やかな力(ローフォース)は、

・歯周組織の血流を妨げない、
・細胞への酸素の供給を遮断しない
  結果

歯の移動に必要な歯槽骨の吸収と再生が理想的なスピードで行われる!

と結論づけられました。それまでは「しっかり留め」、「大きな力を加え」、「力づくでどんどん引っ張る」のが矯正方法の主流で、私自身もそう考えていた矯正歯科医のひとりでした。
しかしDr.デーモンは、その方法では歯の周辺組織に生体が持つ以上の負荷を掛けてしまい、周辺の血流が滞って酸素供給が減り、歯槽骨や歯根膜が死んでしまうと説明しています。
「デーモンシステム」や「クリッピー」は、「体やさしい矯正装置」なのです。

他にもある、ローフォースローフリクションの優位性抜歯の可能性を減らす


セルフラゲージシステム1抜歯を避ける場合、歯をきれいに並べるために歯槽骨全体を横方向に 拡大する必要があるのですが、従来の装置では骨だけでなく歯そのものが斜めに傾いて広がってしまう傾向がありました。

セルフライゲーションブラケットは歯の傾きには影響せず歯槽骨部分を横に広げること(側方拡大)を得意としており、これにより抜歯の可能性が減少しました。

歯周組織の弱い方もOK

ローフォース(弱い力)により、歯、歯ぐき、あごの骨にかかる力が緩やかなため、歯周病や顎関節症などを抱える方にも使えます。

ただし症状の程度にもよりますので事前の判断が必要です。